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『縁』

みつぎの苑・通所リハビリ担当の10年目の理学療法士です。


私はもともと九州・福岡の出身ですが、縁があって御調で働かせていただくようになり、早や7年近くとなります。私の実家は父が理容院、母と妹が美容院を営んでおり、私以外は皆、理美容一家という家族です。


そのような縁かどうかは分かりませんが、仕事を始めて10年で約10人近くの理美容関係の方のリハビリを担当させていただく機会がありました。(個人的にはとても多いと思います!)


その中でも病院で勤務していた際にリハビリを担当させていただいていた理容師のNさんとはいまでも交流があります。初めてお会いした際、Nさんは脳出血による右半身の麻痺を患われ、1年半以上経過された状態で、当時は別の病気で入院されていました。足の麻痺については比較的回復され、お独りで歩くことが可能な状態でした。しかし、手の麻痺についてはまだ回復が進まず、特に手先については動かすのが難しい状態でした。当時のことを聞くと「仕事復帰したいという思いはあったが、手が上手く動かせなかったので、ハサミを持つのも難しかった」と語られました。


Nさんが病院を退院され、外来リハビリに来られたある日、先輩の理学療法士のAさんが「Nさん、僕の頭をバリカンで坊主にしてください」と。Nさんも「じゃあ、やってみようか」ということになり、病気をされて初めて散髪を行うことになりました。実際にみて、私自身は「意外と上手くできているな」という思いでしたが、Nさんは「思ったよりもできなかった、もう少しがんばらないといけないな」と思われたそうです。


これがきっかけとなり、Nさんは目標を立て、まずはハサミを砥ぐ動作から始めました。そのような話をNさんから聞き、私も何かできることはないかと感じていました。坊主になる勇気はなかったのですが、「ハサミでカットしてもらうのであればできる」と思い、「練習相手」になる決心をしました。


そして間もなく、Nさんに初めてハサミでカットしていただきました。ハサミを動かすひとつひとつの動作はゆっくりで力がとても入っている状態でした。そのため最初は一時間以上もかかり、Nさんも「散髪中は会話をする余裕もなく、たいへん疲れた」とおっしゃっていました。その後、外来リハビリに来られた際は、散髪に必要な動作の練習を行い、三ヶ月に一回ぐらいのペースで実践練習としてハサミでカットしていただいていました。


Nさんと初めてお会いして、今年で6年ぐらいたちますが、いまでも散髪していただいています。最初はNさんにとって「練習相手」だった私もいまでは単なる「お客さん」となってしまいました。時間を要していたハサミでカットする動作も滑らかになり、カミソリを使って襟足を整える動作もできるようになりました。


一般的に、脳出血などの脳疾患は受傷されて一年以上たつと回復がなかなか進まないと言われますが、Nさんの努力と頑張りを目の当たりにして決してそうではないと改めて考えさせられました。また私たちリハビリに携わるものも、その努力や頑張りにいかに応えて、精神的にも支えていくかが重要だと感じました。
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